コラム

透析関連情報

透析効率の指標~Kt/Vとは~

「今日体重の増え少ないから3時間でいいかな??」

こちらも前回に引き続き患者様からよく聞かれる言葉です。

透析患者様は水分(塩分)制限、食事制限、時間の拘束、穿刺の痛みなど様々なストレスを抱えています。

でしたら体重(水分)が増えないように頑張った分、透析時間を短くしてほしいという気持ちも分からなくありません。

でもちょっと待ってください。

患者様の中には透析=水分の除去と考えていらっしゃる方も見受けられます。

しかし、透析をしなくてはならなくなってしまった時のことを思い出してみてください。

からだに水分が溜まり、血圧が高くなったり、むくんだり、息切れしたり。
そのほかにもからだがだるかったり、かゆみがあったりなどの症状があり大変だったのではないのでしょうか。

腎臓は腰の辺りに左右ひとつずつあり、重さ約150g程の臓器ですがさまざまな役割を果たしています。
おしっこをつくり、余分な水分だけでなく老廃物(毒素)も排泄しています。
先に述べた症状は腎臓の機能が低下して、老廃物がからだに溜まって起こっていたことです。
※ホルモンの生成やビタミンDの活性化などたくさんありますが今回は割愛させていただきます。

つまり、体重(水分)の増加が少なく短時間で余分な水分を除去できても、老廃物が十分に除去されないのです。

そのために透析時間をしっかり確保することが大切です。

今この記事を書きながら思ったのですが、患者様が「透析=水分の除去」と思ってしまう理由は我々医療者にも原因があるかもしれません。

 

Kt/V(ケーティーオーバーブイまたはケーティーパーブイ)という言葉をご存知ですか??

毎月の採血結果でリンやカリウム、貧血の値やアルブミンなどはよく説明されるかもしれませんが、あまりKt/Vに関して説明をされたことはないのではないでしょうか??

Kt/Vはざっくりいうと、透析によって尿素などの老廃物がどれくらい除去されたかの指標です。

Kt/V1.4以上1.6未満を基準として、Kt/V1.8以上まで死亡リスクが有意に低下していることが報告されています。(図1)

 

しかしこれにも注意が必要です。

Vは患者様のからだの水分量を示しているのでからだが小さい方はKt/Vの値が高くでます。
また、あくまで尿素などの小さい尿毒素の除去で測定しているので、β2ミクログロブリン(別の機会にお話ししようと思います)などは考慮されていません。
さらに、透析時間が4時間未満の場合は、Kt/Vを増加させても死亡リスクは軽減せず、むしろ、リスクの上昇が示されているので、透析時間は4時間以上を維持しながらKt/Vを高めることが必要です。(図2)

 

 

そのためKt/Vだけでは本当によい透析が出来ているのかは分かりません。
例えば、Kt/Vが2.0以上ある体格の小さなご高齢の女性がいるとします。
先ほどお伝えしたように、体格の小さい方は見かけ上Kt/Vが高く出ます。そのため実は透析不足だったなんてこともあり得ますし、Kt/Vが高くても栄養状態も悪く、β2ミクログロブリンが高いが故の合併症などがある患者様ははたしてよい透析を行えているのかということになります。

Kt/Vは透析の効率をあらわすひとつの指標ですがこればかりに頼ってはいけません。

当院では患者様の状態や血液データなどをみながら医師をはじめ看護師や臨床工学技士で各個人に合った透析方法を検討しています。

ご自身の透析の方法や効率など知りたい方はぜひスタッフにお声がけください。
お悩みの症状なども透析の方法によっては改善できる可能性もありますので、医療スタッフだけではなく患者様も共に治療の方針を一緒に考えていけたらと思っています。

 

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