穿刺針の太さは重要です
透析患者様に「透析効率を良くするためにたくさん血液を回さないといけません」と説明する事があります。
その時に、たくさん血液を回すために穿刺針を太くする必要があるとお話しすると「太い針は痛いでしょ?嫌だな・・・。」という意見を耳にします。
太い針は痛いですよね。しかし、我々はなぜ太い針にする事を推奨するのでしょうか?
その理由を書いていこうと思います。
1:血液を綺麗にするには?
透析の原理に拡散があります。
血液を綺麗にするにはダイアライザーになるべく多く通過させて拡散現象を生じさせる事が重要です。
多くの血液を通過させるためにはシャントからなるべく高流量で脱血する必要があります。
2:高流量透析
高流量透析はなるべく多くの血液を脱血する透析方法です。
高流量透析により予後不良因子を多く除去できて良好な透析効率が得られることによりQOL向上になるため重要な基本条件になります。
なるべく多くの血液を脱血するには①シャント血流がしっかりある事と②それを脱血するための十分な穿刺針の太さがある事が重要です。
①シャント血流を安定させるためにはVAIVT(Vasucular Access Interventional Therapy)を行う事でシャント発達が促せます。
*VAIVT(Vasucular Access Interventional Therapy):バスキュラーアクセスへ経皮的にアプローチして病変を拡張する事です。
②穿刺針を太くすると時間あたりで脱血量に幅が広がります。これは、患者様の協力が必須です。
以上の2点が高流量を達成するために必要です。
どちらかが欠けては安定した透析が難しくなってしまいます。
3:ハーゲン・ポアズイユの式(Hagen-Poiseuille)
流量を表す際にハーゲン・ポアズイユの式が使用されます。
こちらの式は管内の流れが層流でニュートン流体(水)に使用されます。
透析では血液(非ニュートン流体)が使用され回路内は乱流であるため一致しませんが穿刺針について説明する際に分かり易いかなと思い記載します。
Q=⊿P・π・r⁴/8μ・L
Q:流量
⊿P:管両端の圧力差
π:円周率
r:管の半径
μ:粘性
L:管の長さ
こちらの式を覚える必要はありません。
重要なのはr(管の半径)です。
管が太くなるとQ(流量)が多くなるという事です。
例えば
⊿P:管両端の圧力差
π:円周率
μ:粘性
L:管の長さ
が全て同じ17G(ゲージ)・16G・15Gの針があるとします。それぞれをr⁴(半径の4乗)にします。
17Gの半径は0.56mm →0.0983・・・・・
16Gの半径は0.625mm →0.1525・・・・・
15Gの半径は0.725mm →0.2762・・・・・
ここでは15Gが16G・17Gと比較して何倍になっているかが重要です。
15G/17G≒2.8倍
15G/16G≒1.8倍
15Gは17Gの約2.8倍、16Gの約1.8倍流れやすい事になります。
細い針より太い針の方が血液を流しやすくなります。
ストローで飲水する時も同じですね。太いストローの方が飲みやすいですよね。
先ほども記載しましたがこれは水などで層流に適応される式のためそのまま透析に代用は難しいですが針が太いほど脱血が良好になります。
太い針は痛みを伴いますがそれ以上に将来的な透析効率向上により良好なQOLを目指して我々は提案している事をご理解頂ければ幸いです。