コラム

透析関連情報

やってちょ

日に日に寒さも増してきて、冬の足音を近くに感じます。本日は私の患者様との思い出話も含めた内容ですので、少しでも心に温もりを感じられれば幸いです。

透析患者様は治療による時間の拘束、食事・塩分制限、健康状態への不安などさまざまなストレスを抱えています。週3回の血液透析を行っている患者様では透析毎に2回針を刺す痛みに耐えなければならないこともストレスの一因です。ちなみに針を刺すことを穿刺(せんし)といいます。

当院ではペンレステープ®、リドカインテープ®、エムラクリーム®などの局所麻酔剤を使用しています。これらは針を刺す部位に約1時間前から使用することで穿刺による痛みを和らげます。

 

血液透析で使用する針は、通常の採血や点滴に使用するものと比べて太くできています。穿刺により患者様は苦痛を伴うため、極力1回で成功するようにスタッフも集中し穿刺に臨んでいますが、必ずしも1回で成功するとは限りません。

人はひとりひとり個性があるように、血管も人それぞれ異なります。細い血管、皮膚表面から深い血管、蛇行している血管などさまざまです。穿刺が難しそうな血管に対しては超音波装置を用いながら穿刺を行っています。超音波を当てることで血管や針の位置が視覚化され、より確実に穿刺を行うことができます。

患者様に針を刺すという行為は、看護師や臨床工学技士など資格を得たからといってすぐに出来るようになることではありません。模擬血管やスタッフ同士で練習をしてはじめて患者様のもとへ伺います。私自身も初めて穿刺をしたときはすごく緊張したのを覚えています。

さて、そろそろコラムのタイトルを回収したいと思いますが、これは私が新人スタッフと共に患者様のもとへ穿刺をさせていただく許可を得に行ったときのことです。ご高齢の男性患者様ですが、新人スタッフに穿刺をさせていただきたいことを伝えると、「やってちょ」とおどけながら快諾していただいたのです。針を刺されるということ自体痛みを伴い苦痛であり、ましてや穿刺に慣れていないスタッフであるため患者様も不安なはずなのに、心の広い対応で逆に新人スタッフの緊張や不安も払拭されたと思います。

我々の知識や技術の習得、向上には常に患者様があってこそだと考えています。先に述べた超音波装置を使用した穿刺においても、普通に穿刺すれば成功するのに、練習のためにあえて超音波装置を使用して失敗することもあります。それでも患者様の協力のもと練習することで、より安全で確実な穿刺の方法を習得することが可能になります。

「やってちょ」 あの日の出来事は私に、初心に還り、患者様に対して感謝の気持ちを忘れず仕事に臨むことを思い出させてくれました。これからもその気持ち忘れず、よりよい看護を提供できるよう努めていきたいと思います。

 

 

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