コラム

透析関連情報

あなたがあなたらしく生きるためにに~治療決定におけるSDMの大切さ~

先月の日本透析医学会学術集会・総会では多くの事を学ぶことが出来ました。
今回はその中でも私が以前より興味を持っていたSDM(シェアード ディシジョン メイキング)についてお話ししたいと思います。

あなたは体調が悪くて病院を受診したとします。そのとき、病気が見つかりなにかしら治療が必要になったとしたら、その治療方法は誰が決めますか??

「先生にお任せします。」

あるあるですね。

透析患者様においても、除水量や透析処方の変更の話をしていると

「難しいことはわからないから看護師(技士)さんに任せるよ。」

とお返事頂くこともしばしば。

信頼していただけていると捉えるとありがたいことです。

この「お任せする」というのは昔ながらの医療の名残りで、パターナリズム(父権主義)といいます。

子供が親の言うことを聞くように、医師(強い立場)から患者様(弱い立場)へ一方的な関わり方で治療方針の決定者は「医師」です。

しかし、このような医師と患者様の権力関係も問題になり、今度はインフォームドコンセント(説明と同意)が主流になりました。
これは医師により病状や治療に関するメリットやデメリットの十分な説明を行い、患者様がそれに対し理解、納得し患者様の自己決定により同意が得られるといった過程です。つまり最終的な治療方針の決定者は「患者様」です。

そして今、あらたにSDM(共同意思決定)というものが提唱され普及しつつあります。
これは、患者様が治療方針を決定するにあたり医師からの医療情報(病状、治療法、代替法、利点、欠点など)の提供だけでなく、患者様からも生活背景や価値観などについて医療者に情報提供をしていただき、お互いの情報を提供しながら協働して治療方針を決定をする過程です。
SDMにおける治療方針の決定者は「医師と患者様」になります。

ここで、ある医師の言葉を紹介させて頂きたいと思います。

「何が医療者の仕事なのかについて私たちは誤った認識をずっとひきずっている。自分たちの仕事は健康と寿命を増進することだと考えている。しかし、本当はもっと大きなことだ。人が幸福でいられるようにすることだ。そして、幸福でいるとは人が生きたいと望む理由のことである。」                       アトゥール・ガワンデ

当院では慢性腎臓病の患者様が多く通院されています。いつか、腎臓の機能もわずかになり治療が必要になってしまうかもしれません。
血液透析、腹膜透析、腎移植、保存的腎臓療法と様々な選択があります。

人生におけるとても大切な選択です。あなたがあなたらしく生きていくために、わたしたちにサポートさせてください。そして、選択したあとも共に歩んで行けたらと思います。

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