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胃薬を飲んでいるとがんになる?

「胃薬を飲んでいるとがんになるって書いてあったけど大丈夫?」

 

最近、週刊誌やインターネットなどで取り上げられており、患者様からもお問い合わせいただくこともあります。

 

自分が飲んでいる薬が、がん発症のリスクを高めるかもしれないなんて心配ですよね。

 

胃薬にも様々な種類のものがありますが、今回のお話しは「胃酸を抑える薬」が該当します。

 

胃酸は食べ物の消化を助けたり、殺菌作用をもちますが、過剰に分泌されると胃潰瘍や逆流性食道炎などを引き起こしてしまうため、それらの治療に使用するのが胃酸抑制薬です。また、血液をサラサラにするお薬やステロイドの副作用予防にも投与されています。

 

胃酸を抑える薬は大きく以下の3種類に分けられます。

 

① カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(以下P-CAB)

② プロトンポンプ阻害薬(以下PPI)

③ ヒスタミン受容体拮抗薬(以下 H2RA)

 

このなかでも①P-CABと②PPIが胃がん発症のリスクになるといわれています。

 

以前より、ピロリ菌除菌後のPPI長期服用により胃がん発症のリスクが上昇するという報告は多数ありました。

 

そして今年、東京大学を中心とした研究グループから、ピロリ菌除菌後の54,000人の日本人を対象にしたP-CAB、PPI、H2RAをそれぞれ服用していた患者様の胃がん発症リスクを調べた研究結果が報告されました。

 

この研究ではピロリ菌の除菌後にH2RAを内服していた患者様と比較し、P-CABを内服していた患者様は胃がんの発症リスクが有意に高く、服用期間が長いほど、服用量が多いほどリスクが上昇することが示されました。また、PPI服用の患者様と比較し、こちらは同程度のリスクを有していることが報告されています。

詳しくご覧になりたい方は以下の論文を検索してみてください。

Association between Vonoprazan and the risk of gastric cancer after Helicobacter pylori eradication

 

途中に何度か書きましたが、これらの研究報告はあくまで「ピロリ菌を除菌した患者様」を対象にした話です。

私も週刊誌の記事などを読みましたが「ピロリ菌除菌後」と記載がありませんでした。

そんな記事を読んだら「胃薬を飲んでいるとがんになる」と思ってしまいます。

 

「ピロリ菌除菌後ではP-CABの長期内服により胃がん発症のリスクが高くなる」といった解釈の方が正しいのではないかと思われます。

 

P-CABの長期服用で、腸内細菌叢の種類が変化したり、ガストリンというホルモンの値が高くなることが報告されておりそれらが胃がん発症のリスクを上昇させる原因ではないかと考えられていますがまだはっきりとは解っておりません。

ちなみにピロリ菌感染歴がない患者様を対象にした同様の報告内容はありませんでしたが、今後研究がすすみ新たな結果が報告されるかもしれません。

 

「医者は絶対に飲まない薬」「飲んではいけない危険な薬」などよく週刊誌の見出しで見かけますが、もしそのような記事を読んでご自身が内服している薬が含まれていたとしたら不安になりますよね。

しかし、自身で判断して中止せずに、まずは医師やスタッフへご相談いただけると幸いです。

 

看護師 山田

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