長時間の除水が体に優しい理由
透析開始時にスタッフから「〇〇〇g残して〇kgにしましょうか?」と提案されると思います。
その時に、患者様から「体調悪ければ伝えるから△kgを4時間で全部除水しちゃってよ」と話される方がいます。
では、なぜスタッフは除水を残すことを提案するのでしょうか?
1:推奨される増加量
安全な透析をするためにも体重増加の量は重要です。
一般的に推奨されている体重増加量を以下に記載します。
・透析日と透析日の間が中1日の場合は、ドライウェイトの3%以内
・透析日と透析日の間が中2日の場合は、ドライウェイトの5%以内
4時間透析でドライウェイトが60kgの場合だと中1日(3%以内)は増加量が1.8kgで除水速度は0.45L/h、
中2日(5%以内)は増加量が3.0kgで除水速度は0.75L/hとなります。
月水金クールの方は以下の様になります。透析日を赤文字で表しています。
2:どこの水分を除去しているのか?
透析中は血管内(血漿)成分から除水を行っています。
血漿は体内にある液体の一種です。
体重に占める割合は細胞内液40%、組織間液15%、血漿5%となります。
血漿が5%という事は体重60kgの方だと3kgという事になります。
左の画像は透析で除水を行う前です。
細胞内液・組織間液・血漿は全て同じ高さになっています。
右の画像は透析で除水を開始した場合です。
除水で血漿が減少しています。そのままでは血漿の部分が空っぽになってしまいます。
そこを補うように組織間液から水分が移動しています。これを、プラズマリフィリング(血漿再充填)と言います。
プラズマリフィリングは記載されている本などにより多いと500ml/hで少ないと300ml/h程度とかなりの差があります。
これは、Albやナトリウムの量が関係していると思われます。
ここでは、一般的に体重1kg当たり5ml/h程度のプラズマリフィリングで計算してみます。
体重60kgの方だと60×5=300ml/hが1時間に組織間液から血漿に充填される量と考えられます。
プラズマリフィリングを大きく上回る量で除水した場合は血漿の減少が速すぎる事によって血圧低下や下肢攣りや気分不快の原因となります。
そのようにならないために、プラズマリフィリングの速度から安全に除水できそうな量を考えて提案しています。